1. 作成経緯

現在、歩道、駅のホーム、横断歩道前、バス停等のあらゆるところに点字ブロックが敷設されており、視覚しょうがい者の外出を促進しています。

しかし、破損してしまった点字ブロックも多数存在しています。また、本来敷設されるべき場所に無かったり、必要以上に敷設されている場所があったりもします。それらのような点字ブロックは視覚しょうがい者だけでなく高齢者、車いす使用者、ベビーカー使用者等の事故や怪我にも繋がります。

点字ブロックの不備を発見した場合、行政等の担当課へ連絡し、修繕していただく必要があります。しかし、現状では点字ブロックの詳細なデータの把握が難しく、すぐには修繕工事が実施されないという問題が生じています。

そこでNPO法人ことばの道案内は、2015年4月から東京都北区と共に『点字ブロック点検・検証及び広域的点字ブロックデータベース制作事業』を実施し、「点字ブロックデータ検索サイト」を作成しました。このシステムでは、点字ブロックの位置や敷設状況に関するデータを地図・一覧表形式で閲覧することができます。データはすべてことばの道案内のメンバーと北区住民による現地調査の結果を基に作成されています。

視覚しょうがい者の外出と社会参加の促進、さらには、みんなが一緒に気持ちよく暮らしていけるように、わたしたち一人ひとりが、お年寄りや障がいがある人などの気持ちになって考え、協力していき相互理解を深めるために、ぜひこのシステムを活用してください。

点字ブロック点検・検証及び広域的点字ブロックデータベース制作事業の紹介写真

2. 作成方法

このシステムには、点字ブロックに関するデータベースが登録されています。データベースは以下の方法で作成されています。

(1)データベースの構成

●位置情報と属性情報

・データベースは「位置情報」と「属性情報」から構成されています。

 ※位置情報とは、点字ブロックが敷設されている場所の位置に関する情報です。つまり、「どこに点字ブロックが敷設されているか」に関する情報です。

 ※属性情報とは、敷設されている点字ブロックの状態に関する情報です。つまり、「どのように点字ブロックが敷設されているか」に関する情報です。

・位置情報は住所、もしくは座標値としてデータベースに登録されています。

・属性情報は数値、文字、写真としてデータベースに登録されています。

●点と線

・データベースは「点」と「線」で構成されています(図1)。

・点とは、主に警告ブロックを中心として一塊になっている点字ブロックのことです。

・線とは、主に誘導ブロックを中心として点と点を繋ぐ点字ブロックのことです。

  ※データベースにおける点と線は点字ブロックの形状のことではありません。点の中に誘導ブロック、線の中に警告ブロックが紛れていることもあります。

・点、線にはそれぞれ「ID」が付けられています。

・データベースには点IDごとの位置情報、属性情報と線IDごとの位置情報、属性情報が登録されています(図2)。

●データベースの内容

データベースには以下の内容が登録されています。

・点

・線

図1 点と線

図1 点と線

図2 データベースのイメージ

図2 データベースのイメージ

(2)調査方法

データベースは以下のような現地調査を基に作成されています。

●調査範囲と体制

・市区町村が設定している「バリアフリー重点整備地区」とその周辺を調査しています。

・重点整備地区とその周辺範囲をいくつかの調査地区に分割し、1つの地区を1日かけて調査しています(図3)。

・1回の調査は原則、晴眼者3名、視覚しょうがい者1名の4人体制で行っています。

・晴眼者が点字ブロックの枚数・距離の計測、写真撮影、記録を行い、視覚しょうがい者が敷設方法の適切性を評価しています。

・各地区は別日に別メンバーが再度調査しています。それによって、1回目の調査結果を確認・修正するとともに、点字ブロックの適切性について多様な意見を集めています。

・なお、閲覧ページでは2回目の調査日を表示しています。

図3 調査範囲のイメージ

図3 調査範囲のイメージ

※赤枠:重点整備地区とその周辺範囲

●「点」と「線」の区別の仕方

点と線は図4、5のようになるべく細かく区別して記録しています。

図4 横断歩道前の点と線の区別

図4 横断歩道前の点と線の区別

図5 歩道上の点と線の区別

図5 歩道上の点と線の区別

●写真について

天候、歩道の混雑度等が原因で調査時に写真撮影できない場合もあります。その場合、調査日とは別の日に再度現地を訪れて撮影しています。そのため、一部の場所については、データベース上の「調査日」と「撮影日」が異なっています。

●点字ブロックの不備のチェック

・点字ブロックの不備は以下の9つのカテゴリーで分類しています。

<破損>…点状突起、線状突起、ブロック全体の摩耗、ひび割れ、ガタつき等

<不要>…敷設する必要がないと思われる点字ブロック

<必要>…点字ブロックを敷設する必要があると思われる場所

<逆>…警告ブロックが必要な場所に誘導ブロックが敷設されている(もしくはその反対)

<性質>…ブロックの材質、形状等の問題

<色>…周囲の地面の色との対比効果が弱い

<障害物>…点字ブロックの上に物が置かれている

<ガイドライン>…『道路の移動等円滑化ガイドライン』(後述)と異なる方法で敷設されている

<その他>…上記以外

 ・これらの情報はデータベースの「備考」に記載されています。

参考 点字ブロックとは?

・2006年に国土交通省が施行した「移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準を定める省令」(以下、省令)2条3項では、点字ブロックは以下のように定義されています。

視覚障害者に対する誘導又は段差の存在等の警告若しくは注意喚起を行うために路面に敷設されるブロックをいう。

なお、省令では「視覚障害者誘導用ブロック」と呼んでいますが、本サイトでは一般的に広く知られている名称の「点字ブロック」を使用します。


・財団法人国土技術研究センター 2011. 『増補 改訂版 道路の移動等円滑化整備ガイドライン』大成出版社.(p. 254)では、点字ブロックの種類は以下のように定められています。

視覚障害者誘導用ブロックの種類は、原則として次の通りとする。

1)線状ブロック

視覚障害者に移動方向を示すために路面に敷設されるブロックであって、平行する線状の突起をその表面につけたブロックで、線状の突起の長手方向が移動方向を示す。

2)点状ブロック

視覚障害者に対し段差の存在等の警告又は注意を喚起する位置を示すために敷設されるブロックであって、点状の突起をその表面につけたブロックをいう。

図6 誘導ブロックと警告ブロック

図6 誘導ブロックと警告ブロック

なお、本サイトでは線状ブロックを「誘導ブロック」、点状ブロックを「警告ブロック」と呼びます。


・点字ブロックの形状はJIS T 9251「高齢者・障害者配慮設計指針―視覚障害者誘導用ブロック等の突起の形状・寸法及びその配列」に合わせたものとされています。詳細は規格もしくは前記ガイドラインを参照してください。


・横断歩道上には点字ブロックとは別に「エスコートゾーン」があります。エスコートゾーンは視覚しょうがい者が横断時に横断方向の手がかりとする突起体(ガイドラインp. 272)であり、警察庁において「エスコートゾーンの設置に関する指針」が策定されています。

 (警視庁ホームページ https://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/kisei/kisei20070525.pdf

エスコートゾーンの画像例

・省令第34条では、点字ブロックの敷設基準は以下のように定められています。詳細は前記ガイドラインを参照してください。

・歩道等、立体横断施設の通路、乗合自動車停留所、路面電車停留場の乗降場及び自動車駐車場の通路には、視覚障害者の移動等円滑化のために必要であると認められる箇所に、視覚障害者誘導用ブロックを敷設するものとする。

・視覚障害者誘導用ブロックの色は、黄色その他の周囲の路面との輝度比が大きいこと等により当該ブロック部分を容易に識別できる色とするものとする。

・視覚障害者誘導用ブロックには、視覚障害者の移動等円滑化のために必要であると認められる箇所に、音声により視覚障害者を案内する設備を設けるものとする。